反復する生き物

基本的には好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ(ときどき別コンテンツあり)。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

来世は他人がいい3巻

来世は他人がいい3巻

小西明日翔(講談社・アフタヌーンKC)

 

これも本当に待ちに待っていてすぐに買ったのですが、多忙のため書けずでした。

某サイトで見て登場を待っていたキャラクターがついに登場です!!

前巻、霧島が吉乃の実家に挨拶に行く話が出て、ここでも何か起きるのか、蓮二がどうして吉乃を東京に行かせたのかが分かるのか、とか話が進みそうな予感ありましたが、今巻はその直前で終了でした。

 

【あらすじ】

翔真が帰ってから、霧島の吉乃に対する態度が微妙に変化。まるで初めて会った頃のような距離を感じる吉乃。ある夜、その違和感を「殺気」と捉えた吉乃は、霧島に真意を問い質すが…

 

いやこれ、霧島の態度の理由なぞ、前巻読めば分かりますよね?

何のために朝早く起きて尾行していたのだ、という話ですよね?

そこ大好物なので、掘り下げて話が展開するのをずっと楽しみにしていて、もう大満足の吉乃と霧島が見られたのですが!その後も盛りだくさんの1冊でした…!

 

【感想】

まず言わせて頂きたい。

椿、大好きです。

新キャラ・明石潟椿(あかしがた・つばき)の登場です。

吉乃の1歳年上のいとこ(吉乃の父親と椿の母親が異母兄妹)で、見るからにお嬢で鼻につきそうなキャラクターなのに、この爽快感は一体何。

表の顔と裏の顔があるようで、掴み所のないキャラクターですが、吉乃を大事に思う気持ちが筋金入りなのがいいです。そして、絶対吉乃の恋敵にはならない(笑)

賢く美しく、男気もあるのに股がゆるい(!)、ヤクザの妾の孫って相当ぶっ飛んでいます。

そもそも霧島は言うに及ばず、主人公の吉乃もぶっ飛んでいるのがこの漫画の魅力なので、主要人物はこうでなくてはならないです(笑)

(もう4人の中なら、翔真が一番まともな人間に見えます…)

そして、なんとここで、作品の冒頭の山場といえる「腎臓売買」の真相が明らかになります!あれはあれでもう終わった話だと思っていたのですが、霧島の中ではそうではなかったようで。

あまり書くとネタバレになるので避けますが、核心をついた霧島の質問への椿の答え方が粋というか、秀逸というか。

非常に頭の良い人です。そしてそこに垣間見える、椿の中に通った一本筋には少しゾッとします。ポリシー強いです。でも漫画の登場人物なので、見ていて清々しい。霧島は、吉乃と椿を似ていると言いますが、同感です。

そして本性を出す時は、京言葉になります。大阪弁になる吉乃と同じ。これがまた可愛い。

 

椿のキャラと、その絡みで垣間見える吉乃と霧島の一面でもう割とお腹いっぱいなのですが、吉乃の風邪エピソードも良いです。

霧島の心配振りと尽くし振りがかなり重くてやばいのですが、私は霧島自体が相当好きなので、可愛いとしか思えず(苦笑)

最後に出てきた霧島の昔の女でまた一波乱ありそうなのですが、もうモブキャラにしか見えません(笑)

次回こそ2人で大阪編ですね。楽しみです!

 

来世は他人がいい(3) (アフタヌーンKC)

来世は他人がいい(3) (アフタヌーンKC)

 

 

◆反復読後の小部屋◆※既読推奨

 

私としては、今巻はやはり、明石潟椿に尽きます。 

蓮二の愛人の娘を母に持つ、吉乃のいとこです(実際は本当に椿の母が蓮二の娘かどうかははっきりしないそうですが、家族は認めているという話)。

パッと見は、典型的な京都を愛する清楚な京美人で、天然という感じのキャラなのですが、貞操観念が薄く、流動的なキープの男性も複数いるいわば「悪女」。

ですが内には鋭い観察眼と洞察力を持ち合わせ、一本筋の通った女性でもあります。

椿は吉乃が席を外した瞬間に、本当の顔で霧島に詰め寄ります。パッと見の椿は登場人物としてもあまり好かれなさそうな雰囲気でしたが、この場面から椿に興味を持った方も多いのではないでしょうか。

 

そして、作品の冒頭の山場といえる「腎臓売買」がここで回収されるとは…!です。

椿のバックには黒い噂がある大手の病院。これが吉乃の「腎臓売買」に一役買っていたわけです。

しかし霧島はずっと吉乃の腎臓を探していたのですね。何のために?ということは考えないでおきますが。

霧島は吉乃の腎臓の行方を尋ね、本当は吉乃は腎臓を摘出していないのではないかという自分の推測を話すのですが、椿の答え方が粋というか何というか。

結局、腎臓は摘出されていなかったことが読者にも明らかになるわけですが、吉乃は「無傷」ではありません。吉乃が腎臓を摘出するのに反対だった椿は、説得を試みるも吉乃が折れず、吉乃には内緒で腎臓の替わりに相当量の血液を抜くことを選択します。

で、その理由がコレ。

命くらい懸けてもらわんと

割に合わんでしょ? 

仲の良いいとこに命を懸けさせるとは。

でもこれは、冷酷とか非情とかそのようなことではなく、「霧島にナメられるくらいなら死んだほうがマシ」という吉乃の意思を尊重しつつ、腎臓を摘出させない唯一の選択肢だったのではと思うのです。

ここまで吉乃に思わせる霧島に、椿も相当興味があったでしょう。

流石の洞察力で霧島を見抜く部分もありましたが、吉乃に執着する本心がどこにあるかは測りかねた模様。なので、吉乃と霧島の組み合わせを推奨する立場には今のところありません。

しかし、あの新幹線のチケットのくだりから見ても、霧島の思慕は本当だと思うのですが…

でも、吉乃と椿が話していた通り、「執着」の可能性もあるのでしょうか。 

そして今巻は、霧島が昔の女・汐田菜緒(しおた・なお)と再会し、大阪でもう一度会おうとしているのか…?というところで終わり。

コレは本当に霧島が何を考えているのか分かりません…が!4巻が楽しみです。