反復する生き物

基本的には好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ(ときどき別コンテンツあり)。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

記憶にございません!(映画)

記憶にございません!(映画)

 

kiokunashi-movie.jp

 

入荷日にゲオ行ったらまだ入荷しておらず、数日後に出向いたら全部貸出中(涙)

しかし三度目の正直でついにレンタルし、観賞!

 

 

【あらすじ】

支持率は驚異の2.3%、憲政史上最悪の総理大臣と呼ばれる黒田啓介(中井貴一)は、演説中に観衆から頭に投石を受け、記憶喪失に。

混乱を避けるため、総理の記憶喪失は秘書官3名(ディーン・フジオカ、小池栄子、迫田孝也)のみが知るところの極秘事項とされ、国民や家族も含めた周囲の人間からも嫌われていた黒田は、政治家になってからの記憶が無いまま、政務に当たることになるがーーー

 

原作の無い映画を観るのは久しぶり、記事にするのは読書あってのこのブログなので初めてです。しかしこちらはどうしてもお勧めしたい。

観たくなったきっかけは、予告編の国会答弁の場面での中井貴一さんの「記憶にねーんだ!!」

こんな総理大臣いる!?いや、いないですよね(反語)

絶対面白いだろうと思っていましたが、期待を裏切りませんでした。

 

【ネタバレに触れないようにした感想】

第一に中井貴一さんの演技ですよね。何故あのように素敵なのに、何故あのように愉快な演技もハマるのでしょう。

そして、総理の味方か敵か微妙な雑誌記者・古郡に佐藤浩市さん(好き)

お二人は年も近く、とても仲もよろしいそうで。スキャンダル写真のやり取りシーンは最高です。記憶を失くして本当に狼狽えている黒田総理と、記憶を失くした黒田にすっかり調子が狂ってしまう古郡。プライベートでもこのように軽妙な会話していたりするのかとか考えると、非常に素敵です。

これが私の好きなシーン第1位なのですが、2位は総理に石が当たる映像、3位はキャディに扮した古郡がアンプレアブルを勧めるシーンです。今まで色々観ましたが、佐藤浩市さんの女装は初見です…酷い(笑)

やはり、随所に散りばめられた笑える場面が素晴らしい。気持ち良く幸せな気持ちで観ていけます。『空飛ぶタイヤ』『検察側の罪人』『花戦さ』『64(ロクヨン)』と、人が亡くなる映画を多く観続けていたので、やっとホッとできたというか。

さすがの三谷幸喜さんです。

 

主役もストーリーも、私が語るまでもなく文句無しなので、他のところに触れようと思います。

黒田総理、古郡ときて、他にも大物役者がこれでもかというほど個性を発揮しているのですが、次に私が好きなのは、SPの古賀です!

古賀を演じるのは、『99.9 -刑事専門弁護士-』の志賀先生(笑)だった藤本隆宏さん。

このSP、メインで総理についているくらいなので、相当優秀なのでしょうが、他の国民の例に漏れず総理が大っ嫌い(笑)

職務は全うしていることと思いますが、記憶を失くした総理を見つけたときは乱暴に車に押し込むし、投石を受けた場面では大爆笑してブーイングの聴衆を携帯で撮影しているという(お陰で犯人が分かるのですが)

古賀はSPなので台詞は少ないのですが、常に側にいる分、傲慢な総理が変わってきていることに気付き、徐々に見直していく様を表情で上手く藤本さんが演じています。遂には笑顔で我先にと拍手するシーンがあります。人は変わるものですね(笑)

藤本さんは、劇団四季に在籍し『キャッツ』のマキャヴィティを演じていた方です。それはさすがに良い声のはずですわ。

 

というわけで、ストーリーや笑えるシーンもさることながら、個性的で魅力的な登場人物全員に、是非ご注目ください!

 

 

↓以下注意↓

【ネタバレありの感想】

楽しく観ているうちに気になってきたことがありました。

黒田総理の記憶、結局どうなるの?

記憶喪失モノでは、まず最後まで記憶が戻らないということはありません。更に、記憶が戻ると大概記憶喪失中の記憶が無いというのがお決まりです。

そうなると、せっかく良い方向に向かっている、日本の政治や周囲の人たちとの関係が悪かった頃に逆戻り?それだとハッピーエンドにはならないよね?と、心配になっていました。

…が!上手くまとめてくれましたね。

「記憶が戻っても記憶喪失中の記憶は無くならなかった」という、王道のパターンではなかったというところが大きく働いてはいるのですが、実はこっそり、柳先生(山口崇さん)が持ってくる封筒と「K2プラン」を中止にする小野田(梶原善さん)の台詞に伏線が仕込まれていたり。

上手くまとまったハッピーエンドで、後味もスッキリでした。

 

さて、では、記憶が戻ったのはいつのタイミングだったのでしょうか。

「いつ」というところにはほぼ触れられていないのですが、私は初見の時点で、

・寿賀さん(斉藤由貴さん)に頭を殴られたところで、記憶が戻ってしまう

・国会答弁で妻・聡子(石田ゆり子さん)に言った愛の言葉が多言語だったので、この時点で記憶が戻っている(アメリカ大統領訪日の際は記憶が無く外国語が全く分からなくなっているため、全て「ミートゥー」で乗り切ることになっていた)

のではないかと考えていました。

勿論観ている間は確信は持てませんでしたが、全部観た後振り返れば、やはり当たっていたのではないかと思うのですが、どうですかね?

 

この映画は、基本的には壮大なスケールの記憶喪失コメディ(!)ですが、日本の政治とある家族の再生の物語でもありました。

間違った方向に進んでいると分かっていても、なかなか急に逆にシフトはできない。大きく変わるきっかけを、黒田総理は子供の頃からずっと、待つ人だったのですね。

息子の篤彦くん(濱田龍臣さん)の笑顔と言葉が印象的でした。

最初から最後までずっと笑えるのに、本当に最後はちょっとホロリときます。やはり大ヒット作品。素直にお勧めです。