反復する生き物

好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

死役所9巻

死役所9巻

あずみきし(新潮社・バンチコミックス)

 

シ村さんの過去がストーリーの軸になってきて、イシ間さんは成仏。

新展開がスタートかと思われましたが、今巻は死者のエピソードに終始しました。しかし合間合間にシ村さんの気になる言動が挟まれています。

そして、1条に登場しているのに「いつまともに出るんだ」と作者さん自ら語っていた(7巻の業務報告書30参照)職員さんが、ついに「まとも」に登場。加賀シロさん。

今のところちょっと嫌な人ですが、これから先活躍しそうな予感です。

 

【各話サブタイトル・主人公】

・託す→甲斐愛生子。介護士

・遺すべきもの→明智磨美。元舞台女優。

・自己判断→上田都築。サラリーマン。

・隠しごと→小見温恵。保険外交員。

 

【感想】

今巻はまた、現代社会の問題が浮き彫りに…という感じでした。

そして、親子が中心の話が多かったですね。

基本お互いに愛情があるので(4つめはちょっとよく分からないところもありますけど)、切ない気持ちにもなりました。

どちらかというと前半の2つの方が好きです。

1つめの愛生子さんは、周りの人からはあまり良く思われてなかったかもしれませんが、母親に対する愛情、仕事へのプロ意識(考え方や方針は人それぞれです。仕事というものは甘くないので、簡単に正しい正しくないは言えないというところで、私は愛生子さんを否定する気にはなれません)、そして人としての弱さもあった真っ当な人です。

「加護の会」もそうですが、どの視点で読むかでガラッと違って見える話でした。

 

そして、今巻は全編通して、死者と関わりながら、加賀シロさん、ハヤシくん、岩シ水くん、ニシ川さん、ハシ本くんたち職員さんたちの思いや考え方が垣間見えます。

シ村さんはそれらを聞いてどう思ったのか。

いつかシ村さんの真相が分かった時に、読者にも推し量ることができるのでしょうか。

 

死役所 9巻 (バンチコミックス)

死役所 9巻 (バンチコミックス)

 

 

◆反復読後の小部屋◆※既読推奨

今巻は、エピソードそのものよりも、それぞれの死者を迎え入れながら語られる職員さんたちの思いに目がいきました。

特に気になったのは最後の話の時のハシ本くんです。

ハシ本くんは他殺課なので、短い間でしたがイシ間さんと関わりがあり、彼なりにイシ間さんに思うものが残っている様子。

そうでなければ名札飾ったりしないかと。

(それを預かって胸ポケットにしまうシ村さんの方が思いは感じますけどね)

「殺す」と紙に何度も書きつけたり、突然キレたり、陰湿なところも見えるのですが、根はいい子なのではないかと思います。

そのハシ本くんが、お客様にキレそうになりました。

引きこもりの息子を恥と思う小見さんにです。

小見さんはシ村さんに、息子を引きこもりから救い出さなかったと言われて強く反論。

その反論を聞いたハシ本くんは怒りを爆発させそうになりますが、シ村さんに諭されて着席。シ村さんの研修の時の言葉を繰り返し、一生懸命怒りを鎮めます。

その前には、フシ見さんにネチネチやられて逃亡していたところ、声をかけてくれたシ村さんに頭を下げて仕事に戻るシーンもありました。

やはり、基本的にはいい子です。

ハシ本くんは、小見さんのどこに引っかかったのでしょう。

そこにハシ本くんが死刑になった理由が隠されているのかなと。

そして、これから明らかになるであろうシ村さんの過去や思いに、心を動かしていくという展開が想像できます。

これからのハシ本くんが楽しみです。