死役所8巻
あずみきし(新潮社・バンチコミックス)
徐々に、訪れる死者のエピソードを描くだけの漫画ではなくなってきました『死役所』もついに8巻です。
色濃くなってきたもう一つの側面は、死役所職員たちのドラマ。
そこに惹かれて全巻集めることにしたわけですが…
今巻は1巻からずっとこの作品を支えてきたであろう1人の主要人物に、大きな転機が訪れます。
【各話サブタイトル・主人公】
・母
→おチビ(胎名)。不妊治療の上授かった荻野泉水の胎児。
・愛を買う
→築本直太郎。27歳整体師、風俗客。
・理想の家族
→尾ヶ崎秀也。多忙な両親を持つ小学生。
・お気を付けて
→石間徳治。元死刑囚・死役所他殺課職員。
【感想】
今巻は終始イシ間さんが、前巻の最後で任期満了の辞令を受けたことで、成仏することにあれこれ思いを巡らせます。
子供に優しく、子供を害する人間は許せないイシ間さんだからでしょうか。今巻は「愛を買う」以外は、子供の物語でした。
そしてまた強烈な職員が新登場。これはどういう死刑囚なんだ、と(笑)
そして、無口で何を考えているか分からない、果ては突然キレるハシ本くんが、少しずつ自分から言葉を発するようになります。
シ村さんとイシ間さんには一目置いてきちんと接し、ニシ川さんのことはどうも恐れている模様(笑)
イシ間さんはそんなハシ本くんを憎からず思っているようで、私もハシ本くんが好きになってきました。この2人の絡みをまだ見たいと思った私は寂しい気持ちでいっぱいです。
イシ間さんがまっすぐに自分の過去と向き合い、シ村さんと話す姿は切なくも名場面。
そして、シ村さん・ハヤシくん・シラ神さん・ニシ川さん・ハシ本くんが、五人五様で「らしく」イシ間さんを送り出す場面は、やはり涙が出ました。
また絹江さんとミチちゃんと出会えますように。そして今度こそずっと一緒にいられますように。
どうか「お気を付けて」
◆反復読後の小部屋◆※既読推奨
私の大好きなイシ間さんが旅立ちました。
イシ間さんは成仏の受付をシ村さんに頼みます。シ村さんが職員になる時に受付をしたのはイシ間さんだったそうです。
その受付時、罪悪感が少しもないわけではなく、殺したくて殺したのでもなく、できれば殺人など犯さずにずっとミチちゃんの側にいたかったと、今まで作品内では分からなかったイシ間さんの複雑な本心が語られます。
でも、今もう一度同じことが起きたら?
殺す と 思う…
ミチちゃんがどれだけ大事だったか。
イシ間さんにはそれだけだったと。
殺人犯を許せない気持ちがあるだろうシ村さんですが、いつもと変わらない笑顔で、イシ間さんの言葉を受け止めます。
そして、最後の最後で、シ村さんもイシ間さんが本当に好きだったのだということが分かります。シ村さんが、負以外の感情を素で表情に出したのは初めてではないでしょうか。
純粋に別れを惜しむハヤシくん、静かに贈り物をしたシラ神さん、直接声はかけないけれど頭を下げてしっかり見送ったニシ川さんとハシ本くん。
イシ間さんの温かい人柄は、ここでも皆に愛されていました。
シ村さん、イシ間さんの言う通り最後はきっと、本当に全てを納得して成仏できると思う。そしてきっとその時が、『死役所』の最終回…
そうあって欲しいけれど、連載が終わってしまうのは寂しいです。