死役所10巻
あずみきし(新潮社・バンチコミックス)
ついに既巻も2桁に突入。
今回の表紙はライターをつける岩シ水くんです。
7巻の「気遣い」で、岩シ水くんの犯した罪は放火だということが窺われましたが、本当にその通りでした。
そして岩シ水くんは、ただの気弱な人ではなく、ハシ本くんより余程厄介でした…
成仏するということを考え始め、突然閉じこもったところから話が始まります。
【各話サブタイトル・主人公】
・岩清水直樹
→人為災害死課職員・岩シ水。
・ダイエット日記
→会田杏。女子大生。
・しるし
→興梠勳子。弁当屋に嫁いだ女性。
・より良い社会を目指して
→連続殺人事件の被害者たち。
【感想】
岩シ水くんの物語、キツいです。
きっと岩シ水くんは、性格は穏やかめで真面目な人なのでしょう。
正しい躾と教育を受けていれば(教育は何が正解とか一概に言えませんが、今回に限っては間違っていると断言していいと思う)、優秀なほうに入る人だし、実直に人生を歩んで自分なりの幸せを手に入れていたかもしれないと思うと…
岩シ水くんは、「それが普通だった」からだけではなく、お父さんが好きだったから、こう育ったのだと思います。
そもそもいい子だったのだと思うと、やるせない怒りが湧いてきます。
岩シ水くんの人生は、途中まで聞くとハヤシくんと同じ予想をしがちですが、そのようなありがちなお話ではないところがまた凄いです。さすが『死役所』
そして、今回一番好きな物語は「しるし」でした。
人間、やはり見た目だと思わされることは多々ありますが、勳子さんのご主人・義一さんは飄々としていて本当に素敵な人。
たった一言で勲子さんのコンプレックスを吹き飛ばし、また同じく生まれてきてもいいと思わせるって凄いこと。
そして、勳子さんが最後まではっきり思い出せなかった記憶には、ここまで読んできた読者にとって、あっと驚くシーンが!
驚くだけではなく、凄く良いです…
「あぁ、こんな感じだったんだ…」と思わせられて、ホッとするような切ないような。
是非実際に読んでください。
◆反復読後の小部屋◆※既読推奨
岩シ水くんはシ村さんに、「屑ですねぇ」と言われてしまいますが、岩シ水くんを屑にしたのは他でもない父親。
ただ、本当に屑なので、どうしても好きになれませんでした。ごめんなさい、岩シ水くん。
ハシ本くんのほうがずっと可愛い。
そして、岩シ水くんがネカフェにいる時に報道されていた殺人事件は、ハヤシくんの事件ですよね。
岩シ水くんとハヤシくんは、正真正銘の同い年なのですね。
あと…個人的に。
ハシ本くんは、この岩シ水くんの育ち方を聞いたらどう思うのかなって。
胎内記憶の話をしたり(8巻「母」)、小見さんが息子の話をしている時に怒ったり(9巻「隠しごと」)、親(多分お母さん?)と何かあったのではないかなと思うのですが。
でも、ハシ本くんがまだ分からなさ過ぎて、本当にただどう思うのかなって思っただけで、終わりました。考えてみても予想もつかずです。
これから話が進んでいったら分かってきますかね…
なんだかんだ言って、ハシ本くんがお気に入りです。読めば読むほど、結構色々な顔に気付かされるキャラクターだと思います。
「しるし」は、話自体もとても良いのですが、ラストのほうにある主人公の記憶が衝撃的です。
生前のシ村さん!!
シ村さんはもともとが役所の職員さんだったようです。
恐らく年齢は勳子さんと同じか少し上くらいかな、という感じ。
奥さんが存命のようなので(7巻「加護の会」参照)、そこまで昔の人ではないと思いましたが、生きていたらもうお爺さんの部類に入る年齢ではあるようです。
普段からあのように優しい顔で笑い、女性に「素敵な人」と思われる人だったのですね。
それが
笑っていれば大抵の人は騙せますから
他人も
自分自身も
と笑顔で言ってしまう(9巻「隠しごと」)人になったのはどうしてなのでしょうか。
自分自身も騙さないといけないシ村さんの今。
この先がますます気になります。