死役所5巻
あずみきし(新潮社・バンチコミックス)
今回の表紙はハヤシくんです。
勿論ハヤシくんの生前エピソードがメインになります。
前巻でミチルちゃんに罪悪感も無く、自分の罪を語ったハヤシくん。
どんな物語があるのでしょうか。
【各話サブタイトル・主人公】
・林晴也
→生活事故死課職員・ハヤシ。
・命の放送
→生野芳聡。ヘプヘプの名でネット配信。
・ヒーローごっこ
→津川勇樹。ヒーローに憧れる小学生男子。
【感想】
ハヤシくんの過去がキツい。
きっかけは被害者の方にあるけど、殺すまでしなくてもよかったんじゃない?って話なのでしょうが!
その裏切り方はダメじゃないですかね。
そのような裏切り方をするくらいなら、最初から寄り添うべきではないです!!
お姉さんが文句無しに良い。だからこそハヤシくんも、ミチルちゃんにお姉さんの話をされて、気持ちが動いたのでしょうね。
ハヤシくんはどのように自分の罪と向き合い、どのように成仏するのでしょうか。
その前にお姉さんに会わせてあげたいです。
ハヤシくんのエピソードがメインの巻ですが、あとの2つも私は好きでした。
「命の放送」ってタイトル重めですが、ヘプヘプのノリは軽い(笑)
主人公のモノローグは一切無く、生前のまともな台詞も殆どありません。
生前の様子は、彼が行っていたネット配信の映像だけで語られていきます。
そして死後の現世の模様も描かれているのですが、それもまた彼に相応しい描き方。
周りから見ると、ネットの中で生きる変わり者だったようですが、実は本人も自覚していないリア充だったのではないかなと。お見事でした。
「ヒーローごっこ」は、番外編となっていますが、普通の可愛い話でした。
ハヤシくんとイシ間さんが、本当に子供に優しいんだと、ほっこりするお話でもあります。
◆反復読後の小部屋◆※既読推奨
本当にハヤシくんの過去がキツい。
何故まりあはハヤシくんの出自を受け入れられなかったのか。受け入れられなかったのなら、どうしてその時に別れなかったのか。
相手の男がまりあのことを「解放してあげて」と言うけど、あんたの子供ができてからあえてハヤシくんと結婚したのはまりあだよ?
後ろめたい気持ちの結婚生活だったのか、ハヤシくんが子供に触れるのも嫌がるし。
本当に何故結婚した。
しかもその生活が耐えられなくなったら、別れは男に頼ませる。あの場に及んでも、自分はハヤシくんに何も言わない。
言いたいことが言えない性格といっても、ここまでくるとね。
(高校時代いじめられていたのも、こういうところじゃないの?とまで思ってしまいましたね。あの時も何も言わないまりあを助けたのはハヤシくんだったし)
怒りに任せて取った行動はいき過ぎだと思うけど、ハヤシくんが許せないと思うのは当たり前だよ…
何回読んでもこのまりあの流れが理解できません。
だから実はこの巻はあまり読みたくない。
「命の放送」の主人公・ヘプヘプこと生野芳聡(せいの・よしあき)。違う読み方をすると、「セイノホウソウ」→「生の放送」?
だからこの名前でこの漢字なのか?と思った方はいらっしゃいますか。
それはさておき。
ネット言葉で普段からこんな会話する人って本当にいるのか?と思うくらい、シ村さんとシラ神さんに理解不能な言葉を発し続ける主人公に、微妙な気持ちになっていたのも束の間。
肝硬変で入院して、腹水溜まるわ黄疸出るわで、絶対安静って言われているなんて、過酷な闘病生活。
でもそれを自分の趣味に活かしてしまう強さ。いや、趣味じゃなくてライフワークだったのでしょうね。
同志はお見舞いに来て、視聴者はその様子をネットで見て。昏睡状態になっても、家族も職場の人も来てくれて。
よしあきは生きていた世界全部で、ちゃんと周りの人から愛されていたのだと分かる。
「スマソ」って言いながら、ちょっと泣きそうになっていた顔を見て、私もちょっと涙が出ました。
芸能人でもないのに、葬儀の様子が全世界に配信される人なんていないよ!でも多分、よしあきにとって最高の見送られ方だったね!
乙。
「ヒーローごっこ」で勇樹が、ハヤシくんを「ヒョウカワさん」(勇樹が好きな仮面ヤンダーの変身する役)と呼ぶのですが。
最後に出てきた本物の「ヒョウカワさん」は、林清三(ハヤシくんの表向きお祖父さん、お母さん曰く本当はお父さん)に似ているとよく言われるそうです。(巻末のオマケのイラスト参照)
ヒョウカワさんとハヤシくんには何か関係が…?
死者は老いないので時系列を推し量るのが難しいのですが、関係があるとしたら、お姉さんの息子がヒョウカワさんという図くらいしか思い浮かびません。
でもお姉さんは、ハヤシくんの事件時点で結婚していなかったし、弟が死刑囚になってしまったので、結婚できたものか…
前巻で、死者の遺族が死役所に来る物語が読んでみたいと言いましたが、ハヤシくんもお姉さんに会えないかな。イシ間さんもミチちゃんに会えたしね。