反復する生き物

基本的には好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ(ときどき別コンテンツあり)。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

大奥3巻

大奥3巻

よしながふみ(白泉社・ジェッツコミックス)

 

3巻の表紙は、千恵(ちえ)の女性の姿となっています。

もともとこのように綺麗な女の子です。

不幸な巡り合わせにより生まれ、女性として、自身としての人生を踏みにじられてきた千恵。歪んだ心から解き放たれ、有功と幸せになれるのでしょうか…ということがとても気になる第3巻です。

 

【あらすじ】

江戸幕府の安泰という目的のため、本来の自身としての生き方を奪われ、絶望の中で暮らしていた万里小路有功(までのこうじ・ありこと)と千恵。お互いの痛みを共有するように愛し合い始め、幸福な日々を送っていたが、千恵は一向に懐妊しない。

千恵に世継ぎを産ませるために有功を大奥に迎えた春日局(かすがのつぼね)は業を煮やし、有功に非情な命令を下す。

また、赤面疱瘡(あかづらほうそう)で男子が減りゆく中、後継者男子不在を隠すため、女子を男装させ性別を偽らせる大名が増加。男子相続を前提とする世は限界を迎え始めていたーーー

 

【時代と幕府の主要人物】

寛永16(1639)年頃〜?

将軍:三代・徳川家光

御台所:(登場せず)※男性の徳川家光も恐らく鷹司孝子(たかつかさ・たかこ)が正室だったようですが

大奥総取締:春日局(かすがのつぼね)

側室:お万の方(おまんのかた)、お楽の方(おらくのかた)、お夏の方(おなつのかた)、お玉の方(おたまのかた)

 

【感想】

長い江戸幕府の歴史の中で、将軍の正室から産まれた将軍というのは家光1人だそうです。

なので、江戸幕府は側室と分家により繋がれてきた幕府とも言えます。

家光といえば、もともと正室(仲悪かったし)より圧倒的に側室のほうが有名な将軍ですが、その側室たちが一気に登場する巻となっています。

仲の悪かった正室は女性に興味の無かった男性家光のほう、子宝に恵まれた側室3人と側室からの唯一の大奥総取締は全て女性の千恵のほうと、男女逆転の時代背景と共に上手く辻褄を合わせて作り上げられていると思いました。

 

しかし個人的な感想となると、2巻最後で有功と千恵の幸せを願っていた身としては少し複雑。

家光がお万の方以外の3人の側室に子供を産ませている歴史を考えれば、予想のつく展開ではありましたが…

そして女性のほうがやはり逞しいものなのでしょうか。母となった千恵は凛として毅然としています。

じゃじゃ馬と呼ばれ、己の人生に絶望し皮肉りながら泣いていた女の子が、全てを受け止めて生きていくことを決心する成長の様が非常に見事。ラストシーンは圧巻です。

  

大奥 3 (ジェッツコミックス)

大奥 3 (ジェッツコミックス)

 

 

◆反復読後の小部屋◆※既読推奨

1巻は序章、2巻は本編導入、そして本格的に本編スタートという感じが3巻です。4巻以降で一気に展開していくと思わせるところで終わります。

見事といえるまでに変わったのは千恵です。でも有功は…それに比べるとちょっと情けない(苦笑)

初読では引き裂かれる2人が切な過ぎてあまり思わなかったのですが。

でも、何度読んでも結局分からなかったのが、有功が玉栄を千恵の側に上げた理由。

自分は子を成せないから千恵の褥に侍ることはできない→他の男が侍るくらいならいっそ玉栄…ということ?でも、有功がそのように考えるものか…と、色々考えましたが、これという答えには辿り着きませんでした。

これ、他の読者の方のお考えを聞いてみたいところです。

 

そして、3巻では春日局がこの世を去ります。このババアが全ての元凶ではないかと思うのですが(苦笑)、生き様は見事でしたね。家光を思い、世を思い、徳川のために生きた女でした。彼女に対しては複雑な思いだったに違いない千恵が、亡骸に頬を寄せて号泣するシーンはちょっとグッときました…

そしてちょうどその直後、男女逆転が公のものになります。男家光を溺愛してきた春日局の死を境に、というところがまた展開のタイミングとして上手いですね。

没日録の執筆も本格的に始まりました。1巻で吉宗と相対しているので、ここで御右筆(ごゆうひつ)となった村瀬正資(むらせ・まさすけ)はあそこまで生きていたのですね。玉栄には心の中で「腰抜け」と馬鹿にされていますが、私は正資好きでした。大奥の数多の男たちの中で、人間らしいまともな心がありながら、春日局に目をかけられていた人だったので、気性も能力もそれなりに持ち合わせていたのでしょう。別れてきた奥さんは実際はどうなったのでしょうか…幸せだったら良いと思いますが、そうは思えないところが少し気にかかります…

 

 

◆既刊を全部読んだ後の小部屋◆※既読推奨

『大奥』では、メインストリームの良いキャラが取った言動が、その時は気にならなくも、実は後々起こる良くない出来事の元凶だった、ということがしばしばあります。

家光・有功編の主人公であり、眉目秀麗、品行方正、心根も穏やかで優しい有功は、物語のキャラクターとしては「ヒーロー」の部類ですが、この先読み進めて振り返ると、その活躍ぶりは実際のところどうだったのでしょう?と思ってしまいます…

4巻以降の話になりますが、家綱(いえつな・四代将軍)の後見人としても役に立ってないし…自分が出過ぎるべきではないと思っていたのでしょうとは思いますが。

家綱を導くことも無く、玉栄を助長させ…うーん、おとなしく仏門に入れたままだったほうが平和だったのでは…もともと春日局は家光との間に子供を作るために連れてきたのに、結局子供もできずでしたし。でも有功がいなければ玉栄もいないわけですからね。綱吉の父と思えば(善悪はさておき)、徳川にはいてもらわなければいけなかった人ですし…

お分かりかと思いますが、私が有功推しではないのです(苦笑)

一部の『大奥』ファンの方々には反対されそうですが。

ちなみに、現在既刊17巻ですが、私の一番好きな男性は瀧山、女性は福子姫(ちょっとボカしました)です。瀧山自身も自分で自分のことを有功よりいい男だと言ってますからね(笑)