反復する生き物

基本的には好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ(ときどき別コンテンツあり)。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

大奥6巻

大奥6巻

よしながふみ(白泉社・ジェッツコミックス)

 

徳川綱吉の治世もついに晩年。表紙は年老いた右衛門佐です。

馬鹿馬鹿しくも哀しい物語が終わり、次の時代が始まります。

 

【あらすじ】

周囲の数多の努力も虚しく、長子・松姫(まつひめ)を喪った後、徳川綱吉(つなよし)は子に恵まれなかった。それでも実子を望む父・桂昌院(けいしょういん)の意向に逆らえず、閉経を迎えてもなお夜な夜な男たちと床を共にする綱吉の評判は、生類憐みの令も手伝い悪くなるばかりだったがーーー

 

【時代と幕府の主要人物】

元禄16(1703)年頃〜正徳2(1712)年

将軍:五代・徳川綱吉→六代・家宣(いえのぶ)

御台所:鷹司信子(たかつかさ・のぶこ)→近衛煕子(このえ・ひろこ)

主な家臣:柳沢吉保(やなぎさわ・よしやす)→間部詮房(まなべ・あきふさ)

大奥総取締:右衛門佐局(えもんのすけのつぼね)→江島(えじま)

側室:お伝の方(おでんのかた)→左京の局(さきょうのつぼね)

 

【感想】

映画にもなりました「綱吉編」、ついに完結です。6巻は綱吉も右衛門佐も登場人物は皆年老い、まるで若い時分の「つけ」を払うような展開。でもそれがまたリアルで、好きになれるかどうかは別にして、非常に説得力と纏まりのある物語だったという印象を受けました。

伝兵衛だけはずっと変わりませんでしたが。

黒鍬者の倅として生まれながら、まだ幼い徳子(綱吉)の寂しさを救い、将軍の側室に成り上がるも、人間として男としての矜持を失わなかった伝兵衛。想う人は徳子1人、その妻には長年振り向かれず、たった1人の愛娘を喪い、長い時間を1人で生きてきた伝兵衛。

他人には、その人生は哀しいものだったと思われると思うのですが…私はそうは思いません。いえ、思いたくないというのが正解でしょうか。主要人物の中で、伝兵衛(と吉保)のみ最期は描かれないのですが、晩年にその想いは救われ、穏やかな気持ちで生涯を閉じたと思いたい。

仏壇に向かう背中は良いシーンでした。

…伝兵衛1人でここまで書けます(まだ書けそう)。

やはり「綱吉編」は、伝兵衛が一番好きです。

 

大奥 6 (ジェッツコミックス)

大奥 6 (ジェッツコミックス)

 

 

◆反復読後の小部屋◆※既読推奨

「綱吉編」については散々書きましたので、話題は「家宣編」に移したいのですが、有功の登場には触れないわけにはいかないかなと。玉栄こと桂昌院がまだ痴呆になっていなかった時分、お見舞いにも現れましたが、桂昌院が亡くなった際にも登場します。家継の想いに応えられず、大奥を去ってから再び出家して永光院となっていたお万の方です。

私は繰り返し『大奥』を読んだ結果、「有功完全無欠ヒーロー説」に猛反対の立場になりましたが(苦笑)、この永光院のシーンは何度読んでも好きです。やはり有功は有功なりに玉栄を大切に思っていたこと、その娘・綱吉のことも自身の娘のように愛しく思っていたこと。この思いに触れたら、やはり涙が出そうになります。

…玉栄がこの人生を歩んだのも、綱吉がこの世に生を受けたのも、有功の所為なのですけどね…辿れば、生類憐みの令も…

 

…さて。まだ導入ですが、「家宣編」にも少し触れます。

徳川家宣は在職たったの3年、若くして亡くなる将軍です。ストーリーとしてはまだ導入なのに、もうこの巻で亡くなってしまいます(1巻の最初にも登場していましたが、随分なおばさんという描かれようで、この巻を読んでから読み返すと、もう少し描き方何とかならなかったのかと考えてしまいます)。

しかし本当に人格者。側室の左京(月光院)も大奥取締役の江島も人格者。間部詮房だけが自分の感情のままに子供っぽくて苛々します。1巻は吉宗から始まったので加納久通、柳沢吉保と、これまでに出てきた女将軍を支える側用人は2人とも、良い悪い別にして、聡明で冷静な切れ物だったのに…

本来は月光院が女性、間部が男性なので、「女剥き出しで間部に執着する月光院」という形で描かれがちなのですが、左京は一見乱れた生活を送っていた割に慎ましい男ですから…

どうしてこれを好きになってしまったのかと…

過去にも書きましたが、私個人的に月光院は相当上位にランクインするのですよね。でも手放しで好きになれないのは、惚れた相手が悪いから…

どうしても何回読んでも我慢できない6巻です。

 

◆既刊を全部読んだ後の小部屋◆※既読推奨

6巻は、まもなく「江島生島事件」が起こることを告げて終わります。

なぜ、左京と間部の密通が事件の序章なのか。ここまでを読んだだけでは分かりませんでしたが、先を読むと、「あぁ、そういうことだったのか…」という、悔しいくらいの展開が待っていました。

本来の江島生島事件も、月光院と天英院の対立による事件だったとは言われるものの、『大奥』内では『大奥』なりの要素が加えられていて…やはり私は思うのです。

 

月光院は惚れた女が悪かった。

 

それが無ければ、左京、私としては好きな男性キャラベスト3に入っていたのですが。

※1位瀧山、2位天璋院、3位伊兵衛です!(笑)

しかしここまででは、左京は、家庭に恵まれなかった割に、持って生まれた美貌と人格で将軍の側室にまで上り詰めながら、慎ましく出過ぎない、良い男なのですが…先まで読んで、繰り返し読むと違った面が見えてきました。

でもこちらについては、7巻の記事で語ろうと思います。

7巻は勿論「江島生島事件」です。悲しく悔しい感想が多くなりそうですが、本日はこの辺で。