反復する生き物

基本的には好きな本を何回も読んだ感想と考察あれこれ(ときどき別コンテンツあり)。上部はこれから読む方、下部はもう読んだ方向け。読まずにネタバレのみ希望の方向けでは無いので、ご注意を。

死役所2巻

死役所2巻

あずみきし(新潮社・バンチコミックス)

 

1巻だけ読むと、単なる「死役所」に訪れる死者のエピソードを一話完結でお送りする漫画ですが。

2巻では、そのスタイルは変わらずも結構背景やキャラクターが動きます。

職員にも徐々にスポットが当たり出し、今巻さっそくイシ間さんです。

新たな登場人物として、死役所職員のハヤシくんも初お目見えです。

 

【各話サブタイトル・主人公】

・腐ったアヒル

→塙保。31歳の漫画家。

・男やもめ

→襟川。妻に先立たれた老人。

・石間徳治

→他殺課職員・イシ間。

・初デート

→伊達夏加。転校を目前にした中3女子。

 

【感想】

今巻の目玉(?)はなんといっても、イシ間さんの過去。

あんないい人が何故死刑囚なのか。

納得いく設定ですが、涙無しでは読めませんでした。

罪は罪。だから死刑。分からないわけではないのですが。

ただ、この巻は、その前の「腐ったアヒル」もとても良いです。

塙くんは凡庸な漫画家だったかもしれませんが、プロ意識と向上心、自分の仕事に対する愛に溢れた素敵な人でした。

絶望の中で、「つらかったけど楽しかった」と自分の人生を振り返り、前へ進むことがどんなに難しいことか。

それを分かってくれている人がいた。

本気で泣いてくれる人もいた。

無念は残れど、珍しく読後感の良い話でした。

 

死役所 2巻 (バンチコミックス)

死役所 2巻 (バンチコミックス)

 

 

◆反復読後の小部屋◆※既読推奨

「腐ったアヒル」について、完全に中身に触れた感想。

塙くんは自殺ではない。でも、周囲には自殺だと思われてしまう。

それを「少し悔しい」と零す塙くんに教えてあげたい!

頭の中を知りたいと思っていた戸川先生だけは、塙くんの気持ちちゃんと分かっていたよ。戸川先生は塙くんの絵とずっと会話してたんだって…

なかなか売れないけど、作風を好きだっていってくれていた直入さんは、本当に塙くんのことが好きだったんだよ。

死んだらもう知ることはできない。読後感は悪くないけど、それだけがやるせない話です。

 

イシ間さんの殺人は、殺されて当然だろ、あのクソガキども。

ミチの被害が明るみに出ていれば、情状酌量で死刑は無かったと思うのですが…

イシ間さんは頑なに拒んだのでしょうね。

ミチもどんな気持ちで必死に減刑を求めたのか…

自分の人生を命を賭して守ってくれた、大好きなおじさん。

会えて良かったね。

イシ間さんは男気と愛情に溢れた素敵なキャラクターです。

 

今巻のラストシーンは、シ村さんの生前の謎を垣間見る1枚。

シ村さんが殺したってこと…?

まだまだ謎は尽きません。