死役所3巻
あずみきし(新潮社・バンチコミックス)
前巻から職員にハヤシくんが登場しました。
シ村さん・イシ間さん・ニシ川さん・ハヤシくんの4人を中心に、死役所に死者を迎え入れ、送り出すスタイルで第3巻です。
今巻は、職員さんにスポットが当たる話は無しでした。
3回に渡る長めの物語からスタートです。
【各話サブタイトル・主人公】
・カニの生き方
→佐尾高慈。お笑いコンビ「カニすべからく」の片割れ。
・前を見て
→須藤麻帆。女子高生。
・成仏しません
→三樹ミチル。女子大生。
【感想】
今巻は職員のエピソードは無く、3人の死者が登場します。「カニの生き方」が長いので、3人。
しかしこの「カニの生き方」、長い物語にふさわしい名作。
主人公・佐尾はお笑いコンビ「カニすべらかく」の片割れです。
その心の中はあまり語られることはなく、周りからも何を考えているのか分からないと思われていそうな謎キャラ。
逆に相方・高関の方が場面に出てきてうるさい感じ(笑)
高関は明るくコミュニケーション能力も高く、何故相方に佐尾を選んだのか?と思われてそう。
でも高関は佐尾のセンスに惚れ込み、相方は佐尾しかいないと信じています。
佐尾は佐尾で、そんな高関を理解し大事に思っていたことが、読めば読むほど伝わってきます。
繰り返し読むうちに、涙の出るポイントが早くなるという珍しい漫画でした。
1度ではなく、読み返すことをお勧めします。
◆反復読後の小部屋◆※既読推奨
既巻は全巻読み終わっている私ですが、職員以外のエピソードでは、この「カニの生き方」が一番好きです。
遺伝性の難病だったので、両親に疑問を持ちながらも、淡々と自分の運命を受け入れ、刹那的になることもなく、普段通りの時間を過ごしていった佐尾。
最期のシーンは描かれていませんが、ライブに満足に出られないほど悪化し、高関に病気のことが知られてからも、何年も生きた模様です。
(末にある各話主人公の写真の中に、高関の結婚式の写真があり、幼児だった高関の長男がかなり大きくなって妹の手を引いているので。佐尾はだいぶ痩せていて、最期が近かったことも分かります)
その何年は描かれていませんが、やっぱり普段通りに最期まで高関と共に歩んだのだと思います。
だから成仏の扉の前で立ち止まらなかった。
思い返すこともしたくなかったか
あるいは
振り返る必要もない程
満足して亡くなられたか…
後者であることは疑いようもない。
全編に渡り、描かれていない部分が色々語ってくれる作りが非常に秀逸です。
社会の問題が題材になっているわけでもなく、素直に笑えて、泣ける素敵なお話です。
1回読んだ方も、もう1回読んでみてください。